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おそらくソリタリーのぼくの雑記

『蜂蜜と遠雷』読了。オススメのスポーツ漫画?

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音のひとつひとつを聴くがごとく

先日このブログでも紹介した『蜂蜜と遠雷』を読み終えました。

2週間かけて上下巻を読んだことになりますが、

時間をかけても読んでよかったと思えるものでした。

 

読み終えたあとはずっしりと重いものを受け取った感覚でしたね。

 

ぼくとしてはまるでピアノの音のひとつひとつを聴き取ろうとするかのように、

一文一文を丁寧に読みました。

一文読んでは、その表現に感嘆して何度も読んでみたり。

使われている漢字のことを調べてみたり。

通常少々わからない漢字などが出てきても構わずに読み進めます。

ところが今回は、この漢字の意味は、どうしてこの漢字が使われているのか、

そんなことまでも考えながら読むという珍しい経験をしました。

 

何かをつかみ取りたい、掴み取らなければ

という気持ちにさせられる力をもった小説だったといえます。

 

 

オススメのスポーツ漫画

普段から小説を読む方でも好みのジャンルというのがあると思います。

時代小説・ミステリー・ホラーなど。

ベストセラーはあまり好きではないという方もいるでしょう。

『蜂蜜と遠雷』は音楽小説です。

それを理由に敬遠するのはもったいないかなと思います。

未読の方は絶対に読んだ方がいいと言い切れる作品です。

 

そして、

 

もし、「面白いスポーツ漫画はないか」と探している人がいたら

その人に対してもオススメできますね。

 

「俺が言っているのはスポーツ」(怒怒怒)

 

「で、漫画」(怒怒怒)

 

「音楽で小説ってまったく別もんだろっっっっっっっっ!!!!」

 

と聞こえてきそうですが。

 

違うんですって。

 

激戦の末にトーナメントを勝ち進んでいく、スポーツ漫画の醍醐味が

この作品にはあるんです。

 

楽家はアスリートである これは主要メンバーであるマサルの言葉です。

上巻の142ページでそのことが語られます。

すべては強靭な肉体がなし得るもの。それを支える日々の鍛錬。

 

スポーツに見る感激の種が、音楽にもある。

少なくともこの『蜂蜜と遠雷』には、あります。

 

 

春と修羅

コンクールには課題曲というのがあり、

今回の作品では「春と修羅」という曲をプログラムに入れることが要求されています。

 

これは宮沢賢治の詩である「春と修羅」をモチーフとして作曲されたものです。

それをいかに弾くか。

主要メンバーの一人である明石は

その詩だけでなく、賢治の作品を読み返し、彼に関する評論も読み、

その世界観、宇宙観をイメージしようと努力します。

岩手に行き、作品の舞台となったといわれる場所を見て回ります。

そうやって曲のイメージに文学作品のイメージを乗せていきます。

 

ひとつの曲を弾くにもこのような丁寧な作業が必要だということでしょうか。

 

ぼくもその気になってさっそく「春と修羅」を読んでみたのですが、

一文読んで首を捻り、もう一文読んでは首を捻り・・・。

まったく理解できずに早々に退散するというお粗末さです。

 

物語も後半。

各メンバーが「春と修羅」をどのように解釈して弾きこなすのかも

読みどころのひとつです。

 

またもや風間塵

風間塵が通常の音楽家ではないことは前半でもわかることなのですが、

コンテストの最中にもかかわらず、彼はまたとんでもないことをはじめてしまいます。

でも、それはあくまでも先生と約束したことのためなのです。

 

彼はその耳の良さと、演奏でまわりを唖然とさせたり、よろこばせたり、

ときに青ざめさせます。経験豊富なプロでさえ。

 

ホフマン先生が残したことば

「彼を『ギフト』とするか、それとも『災厄』としてしまうか」

この意味するところも物語が進むにつれてわかっていきます。

 

まわりを大きく巻き込みながら、彼を中心として、

コンテストだけでなく業界がまわりはじめる予感をさせます。

 

物語のクライマックスは風間塵の演奏です。

この小説を読んだ感想には

「音楽が聴こえる」「音が飛び出してくる」

そんなものを目にしました。

それを本当に体験することになります。

 

完璧なラスト

風間塵の演奏で爆発した物語が、やがて終焉へと向かいます。

 

静かに静かに流れていく感じでしょうか。

亜夜の視点でコンテストが閉じられ、

審査員の視点から冷静な振り返りがあります。

エピローグ。

 

広がったものが上手にきれいにたたまれていく。

上下巻にわたる物語が終わるにふさわしいラストです。

 

この物語こそが、『ギフト』であったことを理解しました。