toohiiのお一人様がいい

おそらくソリタリーのぼくの雑記

生死を分ける選択を迫られるも、提示されたヒントの意味がわからない。どうする?

今回紹介するのは、貴志祐介さんの「罪人の選択」という短編小説です。

 

登場人物は3人。

殺したいと望む人。佐久間茂。

殺されようとしている人。磯部武雄。

見届け人。浅井正太郎。

 

時は1946年。終戦間もないころです。

佐久間と磯部は「茂ちゃん」「タケ」と呼び合う幼なじみです。

でも、殺そうとする。殺されようとしているという関係になっています。

2人の間に何があったかといえば、浮気です。不倫です。

皆さんの大っ嫌いな、不倫です。

磯部が佐久間の妻と不倫したんです。

 

そんなの磯部が悪い。今すぐ殺せええええ。

とヒステリックな声が聞こえてきそうですが、まあ落ち着いてください。

 

佐久間は戦争に行って死んだってことになっていたんです。

夫が戦争に行っている間は、佐久間の家族は食うに困っていた。

だから、磯部ははじめは善意で食糧を持って行っていた。

やがて惚れてしまって。

そこに佐久間が戦死したという知らせがあり、それで・・・。

 

ところがところが、佐久間は生きて帰ってきた。 

佐久間は「お前が俺の妻を汚した」と本気で激怒しています。

事情を知った浅井が見届け人を申し出て、

磯部の処刑が執行されようとしているという状況です。

 

ここで、佐久間から提案が出されます。

磯部は椅子に座らされ、前にテーブルがあるのですが、その上に。

中身の入った一升瓶と銀色の缶詰。

このどちらかに毒が入っている。

一升瓶の焼酎を選ぶならばコップ一杯を飲み干せ。缶詰を選ぶなら、中身を全部食え。

 

やったことは許せない。

だが、もとは善意からはじまったこと。

食糧のおかげで家族が飢えずに済んだのも事実。

だからこそ、どっちかを選ばせてやる。

 

人の妻を寝取った罪人に選択を迫る。

「罪人の選択」のはじまりです。

 

ところで、何故この2つなのでしょうか。

焼酎と缶詰。

この意味を考えれば正解は自ずと明らかになると佐久間はいいます。

答えを導くヒントがそこにあるといいます。

その意味とは何なのか。

佐久間はすぐにいいます。

「正解は、おまえへの感謝。毒入りは、おまえに対する憤りだ」

 

それが意味するものはわかった。

しかし、意図がわからない。どっちをどうとらえるべきなのか。

単純に考えれば、家族に食糧をくれたことへの感謝。

つまり缶詰が正解。

ですが・・・。

同じ村で育った幼馴染みであることがその答えにブレーキを掛けます。

村には何かのお礼をする際に、一升瓶を風呂敷に包んで持っていく習わし

があるのです。村では感謝=一升瓶なのです。

どちらも正解ととらえることができてしまう。

 

磯部は様々に考えを巡らせます。

よく見ると一升瓶にはキカイ栓という、自由に開け閉めができるものがついている。

これならば容易に毒を入れることができます。

磯部は、一升瓶の中身がカストリ焼酎であることに気づきます。

磯部が実は密造酒で荒稼ぎをしているからわかるのです。

その意味でもこの男は罪人であり、きまじめな性格の佐久間は憤りを感じている。

対するは缶詰。これは毒の入れようがありません。

ならば缶詰が正解。

ところが、その缶詰の中身が「フグの卵巣・糖ヅケ」。フグの卵巣は猛毒です。

実は北陸では昔から独自の製法で毒を抜いて、フグの卵巣を食べています。

その方法を知った佐久間の父親が毒抜きをして、家族が製缶機で缶詰にした。

だから安心だよ。とはなりませんよね。

それで本当に毒がなくなっているかは、まったくのところわからない。

元の木阿弥です。

 

時は飛んで1964年。

登場人物は、2人。

殺したいと望む人。佐久間満子。
殺されようとしている人。黒田正雪。

1946年と人は違えど同じ状況です。

 

佐久間満子は佐久間茂の娘です。

その満子に結婚をチラつかせて金を取り、その金をギャンブルに使ってしまった

黒田は罪人です。他の女にも同じようなことをしているだけではなく、なんと、

満子の妹にまで手を出していた。弄ばれて捨てられた妹は自殺してしまった。

満子は怒り狂っています。

しかし、実は黒田には恩がある。

そこで、満子は父親がしたことと全く同じことをして裁こうと考えた。

同じ場所に罪人を連れて来て、同じものを提示した。

中身の入った一升瓶と銀色の缶詰。
このどちらかに毒が入っている。
一升瓶の焼酎を選ぶならばコップ一杯を飲み干せ。缶詰を選ぶなら、中身を全部食え。

 

そしてここで大きな事実が明かされます。

同じ場所にある白骨化死体。それが磯部武雄のものであると。

「結果は、いうまでもないでしょう?」

 

ここで、物語が変るんですね。

 

物語は、1946年と1964年と交互に展開していきます。

1946年は「正解は、おまえへの感謝。毒入りは、おまえに対する憤りだ」
これに込めた意図は何であるか。つまり佐久間の意図を探る。

1964年は、磯部がどのように考えたのか。

つまり佐久間の意図を磯部がどのように解釈したのかを探る。その逆が正解。

別の視点が加わるわけです。

 

そうやって磯部の視点と、黒田の視点から、選択の正解に近づいていく。

 

中盤を過ぎたあたりで、黒田があるものに気づいたことで物語は急展開するのですが・・・・。

 

罪人はどういう選択をするのでしょうか。

この物語は☟に収録されています。

 

罪人の選択

罪人の選択

 

 正解はどっちだ!?