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toohiiのお一人様がいい

おそらくソリタリーのぼくの雑記

おいしいたいやきを焼く女の子と出会う話。

今回紹介するのは『静かな雨』という小説です。

作者は宮下奈都さん。

 

宮下奈都さんといえば『羊と鋼の森』で有名になりましたよね。

ぼくもその小説で知りました。

直木賞候補になり、本屋大賞を受賞されました。

山﨑賢人さん主演で映画化もされました。

 

ぼくも読んでみてとても良かったので、他の作品も読んでみたくなったのです。

 

ちなみに、名前の奈都をずっと「なと」と呼んでいましたが、

正解は「なつ」でした。しばらく気がづきませんでした。

 

さて、本題に入りましょう。

『静かな雨』は宮下奈都さんのデビュー作です。

 

主人公は行助。ゆきすけと読む。物語は彼の一人称で語られます。

 

行助は冒頭でいきなり失業者となります。

勤めていた会社が廃業することになってしまったからです。

そして、彼は生まれつき足に麻痺があり、いつも松葉杖をついている。

 

ところが、人生においての大きなダメージと思われるようなできごとが、

物語に大きくかかわって来ない。

新しい職はすぐに見つかるし、

足の麻痺に関してもさりげなく触れられる程度に過ぎません。

 

されどその彼の「歩行」こそが、物語に一定のリズムを生み出しているのである。

的なことを解説の方(辻原登氏。紫綬褒章をとった偉い人)が書いています。

 

その偉い人いわく、とにかく小説の冒頭がすごいんですって。

優れた小説の例にもれず、

冒頭の数ページで物語のモチーフが提示されているそうです。

 

それが、おいしさと、たいやきと、女の子、だそうです。

 

そうです。

この小説はおいしいたいやきを焼く女の子と行助が出会う話です。

 

女の子は駅のそばのパチンコ屋の裏の駐車場に、プレハブの、

物置をひとまわり大きくしただけのような店でたいやきを売っています。

そのたいやきがものすごくおいしい

 

どれくらいおいしいかといえば、店を後にした行助が、

歩きながら食べることにして、あまりにおいしいので立ち止まり、

足が麻痺しているにもかかわらず、

おいしいことを女の子に伝えるためにわざわざ戻るのです。

 

女の子の名は「こよみ」。

彼女のたいやきを食べた者は、

それまで胸を占めていたが負の感情が一瞬にして取り払われる。

腹が立つほどうまいといった人もいる。

そんな凄腕たいやき名人なのです。

 

腕前だけでなく人柄もやさしくて、

学生からは「こよみちゃん」と呼ばれて相談まで受けています。

 

でも、そんな「こよみちゃん」。

どうやら、訳ありみたいなんですよね。

 

家族はバラバラみたいですし、

一度チンピラにからまれてしまうのですが、平気です。

止めに入った行助を、その後で、

「それにしても、ケンカ慣れしてないよねえ」と笑います。

そもそもパチンコ屋の裏の駐車場で出店していることからも、

あまり知られていない世の中の仕組みみたいなものを

理解しているようですし。

なんでも、穴場らしいんですよね。

 

ほどなくして行助とこよみはつきあいはじめます。

同棲をはじめます。

しあわせな2人ですが、そんな2人を大きな不幸が襲います。

 

それでも、2人はそれを乗り越え、受け入れ、理解しようとつとめ、

2人の生活をつづけていきます。

 

行助の両親と姉もそれを理解し、行助を支えます。

 

良き理解者たちを得て、行助はこよみと日々暮らしていくのですが。

受け入れ、理解し、寄り添うことを決めているはずなのですが、

時折、いら立ちを見せます。

そのたまったものが爆発して、ある日行助はこよみに意地悪をしてしまいます。

今までがとてもいい感じだけに、

その場面は思わず本から目を背けてしまいました。それぐらい痛々しい。

 

それも乗り越えてまた2人の日常は続いていくのですけどね。

 

 

この小説には音楽が多く出てきます。

 

こよみさんのたいやきを焼くときの心構えとバイオリン奏者の練習法。

こよみさんがピアノをやっていたこと。

物語はロックミュージシャンの話で終わります。

 

音楽とは反復であり、それが変化していき、心地よい気分にさせてくれます。

日常もまた、反復です。

それが生み出す心地よさのようなものが感じられて、読んでいて気分がいい。

優しい気持ちになれる小説です。

 

静かな雨 (文春文庫)

静かな雨 (文春文庫)